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知っておきたい女性の病気

個人差はあるけれど45〜55 歳に症状が

更年期障害

エストロゲンの低下を補うホルモン補充療法が症状改善に適した治療

更年期とは女性ホルモンの分泌が低下する、閉経を挟んだ5〜10年の期間。個人差はありますが、45〜55歳ごろに迎える人が多いといわれます。

この時期に今までにない身体的、精神的不調を来すことがあります。それらの不快な症状を「更年期症状」、また日常生活に支障が出るほど症状がつらい症状の場合は「更年期障害」と呼ばれます。

更年期障害の主な症状は、次の3つのカテゴリーに分けられます。

まず「身体症状」。脳には卵巣機能を調節する視床下部と下垂体があり、女性らしい体格を促進するエストロゲン(卵胞ホルモン)を出すように卵巣に命令します。

しかし更年期を迎え、卵巣機能が低下すると、視床下部と下垂体が命令しても、エストロゲンを出すことが難しくなります。そのため自律神経が乱れ、顔の火照りや動悸(どうき)、異常な発汗など、典型的な更年期障害の症状が現れます。

2つ目は「その他の身体症状」。エストロゲン分泌の急激な低下に伴い、脂質異常症、心・血管疾患などの生活習慣病や、骨粗しょう症などのリスクが高くなります。

そして最後が「精神的症状」。不眠、不安感、憂うつ感、イライラ、無気力などが主な症状です。さらに更年期を迎える時期は、女性のライフスタイルに変化が起こりやすいときです。さまざまな悩みが、症状の進行に拍車をかけることもあるといわれています。

専門医と相談して自分に合った治療法をみつけよう

エストロゲンを補う「ホルモン補充療法」が症状を改善させるのに適した治療法です。経口薬が主流ですが、肌に直接張り付け、肝臓に負
担をかけない貼付(てんぷ)剤やジェル剤もあり、経口薬にない利点も報告されています。

同療法の効果が最も高いのは、閉経時に急激に現れる、火照り、発汗、冷え、目まい、動悸などの「身体症状」で、3週間ほどの服用で効果が出るといわれます。 

また「その他の身体症状」に属する関節痛、知覚異常、皮膚のトラブルの改善や、閉経後の骨粗しょう症の予防、「精神的症状」の不眠、イライラ、不安感、憂うつ感の緩和を期待できます。

ホルモン補充療法は基本的にエストロゲンを補充する治療のため、子宮内膜や乳腺の働きを活発にします。そのため人によっては乳房が張ったり、下腹部が痛んだり、不正出血が起きたりします。しかしこうした症状は一過性であることが多く、薬の種類や量を変えると改善されます。

またエストロゲンを単独で使うと、子宮体がんが増加する傾向があります。そのため、ホルモン補充療法では、一般的にエストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)を併用します。これは排卵を促進させる働きを持つプロゲステロンが、エストロゲンによる副作用を抑えるためです。

乳がん、子宮体がんの人、血栓症の経験がある人、重症の肝臓病の人などは基本的にホルモン補充療法を受けられません。また治療前に子宮、乳房、卵巣、肝臓機能の検査を受けた上で、ホルモンの補充が行われます。

ホルモン補充療法を続ける期間は数カ月、2〜3年、数年〜10年以上と個人差があります。

家族や友人に更年期であることを打ち明け、精神的に支えになってもらうのも効果的です。専門医を受診し、自分に合った治療法をみつけましょう。