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保湿と清潔にすることで子どもを皮膚病から守る 奈良県立医科大学 皮膚科学教授 浅田秀夫

子どもの皮膚は薄くて弱いものです。
痒いところを我慢できずにかいていると痒みはどんどん広がります。
今回は皮膚病のスペシャリストである奈良県立医科大学 皮膚科学教授の浅田秀夫先生にお話をうかがいました。
毎日のお子さんの皮膚のケアにお役立てください。

痒みを伴う皮膚病を防ぐには 日常の保湿が大切

 痒みは大人の私たちにとっても辛い症状です。痒みを我慢することはなかなかできませんね。肌が痒くなって、ついかいてしまう。するともっと痒くなって、またかいてしまう。これは小さなお子さんにとっても同じことです。かかないようにと言ってもすぐにかいてしまいますし、就寝中に無意識にかくことも多いですね。

 小学校入学前のお子さん、つまり幼稚園児のお子さんが罹る痒みを伴う皮膚病の代表といえばまず「アトピー性皮膚炎」があげられます。また夏場にかきこわしの傷からトビヒを生じることもあります。小さなお子さんは皮膚が薄くて弱いですから、少しの痒みでもかき始めると皮膚のバリアが傷つき、そこからアレルゲンが侵入し、炎症を引き起こし、さらに痒くなり、またかいてしまうという悪循環に陥ってしまいます。こういう痒みのある皮膚病から小さなお子さんを守るためには、日頃から肌を清潔にして、保湿することが大切です。

 肌の保湿とは、肌を乾燥させないということです。お子さんそれぞれの皮膚の状態にもよりますが、特に乾燥肌のお子さんであれば保湿をしっかりと行ってあげることで、皮膚のバリアを保つことが出来ます。ドラッグストアなどで手に入る市販の保湿剤やクリーム、ローションで十分効果があります。少なくとも一日に一回、特にお風呂上りに、保湿クリームなどで肌の手入れをしてあげてください。特に冬場は肌が乾燥しやすいので、保湿をしっかり行ってあげましょう。

かきやぶりを始めたら迷わずかかりつけ医の受診を

 痒みの初期の症状であれば、市販の保湿剤などで対処できます。ご家庭での見極めですが、皮膚が乾燥しているが赤味のない状態が初期の症状です。この段階では、保湿ケアで乾燥を改善することで、かゆみを軽減することができます。

 かくことが多くなり肌に赤味が出だしたら、保湿剤での対処は困難です。こんな症状が出始めたら、かかりつけ医あるいは皮膚科専門医に相談してください。病院に行く時間がなく薬局でステロイド系のOTC薬を購入して使用する場合もあるかもしれませんが、炎症や痒みが落ち着けば、早めに保湿剤でのケアに戻してください。部位や症状によって使用薬や使用法が異なりますので、専門医の指導の下で使用することをお勧めします。

 かきやぶりが見られれば、早めに皮膚科専門医またはかかりつけの小児科専門医を受診してください。

 またアトピー性皮膚炎にヘルペスウイルスや細菌の感染が合併する場合があります。ジュクジュクしたキズやかさぶたが急速に広がってきた時は直ちに皮膚科での受診が必要になります。

 床やカーペットを清潔に保つこともアレルギーを予防するために大切です。アレルゲンは口からも皮膚からも入ってきますが、特に皮膚からのアレルゲンの侵入はアレルギーの引き金になることが多く(経皮感作:けいひかんさ)、注意が必要です。またペットを飼われているご家庭では、毛やフケの始末をきちんとしましょう。

アトピーを過剰に気にしないことが大切

 お子さんがアトピーになると、とても落ち込む親御さんをよく見かけます。しかしあまり気にする必要はありません。成長とともに皮膚のバリアがしっかりしてくれば、アトピーの多くは良くなってきます。

 保湿ケアをしっかりと行えば、アトピーの進行を抑えることもできます。とにかく皮膚を清潔に保ち、保湿を充分行うことが基本です。口からの摂取を過剰に気にする必要もありません。今ではアナフィラキシーや喘息などの重症アレルギーのお子さんでなければ、「完全除去食」を薦める専門家はいません。たとえば、卵でアレルギー検査が陽性だからといって、卵が含まれている食物をまったく口にしないのは、かえって良くありません。アレルギー検査で、少しばかりスコア(反応)が出たとしても、過剰な反応は禁物です。熱を加えたり、調理・加工したものを少しずつ食べさせることが大切です。口から少しずつアレルゲンを摂取することで、むしろアレルギー反応が抑えられることもわかってきました。また、過度の除去食は成長にも悪影響を及ぼすことがあります。

 公園デビューや幼稚園での生活などにより、お子さんの社会生活がはじまります。多くの友達とのコミュニケーションを通じて社会への適切な順応を学べる環境は、とても大切です。集団生活においては、皮膚の感染症をうつさない、うつらないようにすることが大切です。特に夏場は注意が必要です。トビヒは接触でうつりますので、プールは見学させるなどの配慮が必要です。またミズイボについてもタオル、ビート板などを介してうつることがあります。これらの共用は避けるようにしましょう。「手足口病」の予防には、トイレの後によく手洗いする習慣を身につけることが効果的です。汗をかきやすい夏こそ肌を清潔にし、保湿ケアに十分注意を払ってあげてください。お子さんの健全な成長のために、痒みのない気持ちのよい環境づくりを心がけましょう。

奈良県立医科大学附属病院
〒634-8522
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